シニア世代でも会社員として働きながら、副業に取り組んでいる方もいるかもしれません。
アマゾンのマーケットプレイスでは、本格的な物販はもちろん、家庭の不要品を売り払うこともできます。不要品マーケットと言えば、メルカリやヤフオク!を思い浮かべますが、慣れれば、マーケットプレイスでもかんたんに出品できます。
売上が20万円を超えたら確定申告
ただし、副業の場合、アマゾンを含むすべてのもうけが20万円を超えたら所得税の確定申告をしなければなりません。
原則として、不要品の処分だったら申告はいりませんが、継続的に出品→販売をするようになると、事業とみなされ、確定申告を意識しなければなりません。
なお、アマゾンのマーケットプレイスでは、売上があると、2週に1回振込があります。それは銀行口座で確認できます。
登録メール(アマゾンID)にも毎回、こうした振込通知が届きます。
期中は現金主義で仕訳する
ここでは、支払明細書の入手の仕方から、やよい青色申告オンラインを使った仕訳の仕方を解説していきます。アマゾンの確定申告をする方にとっては、必須の作業になります。
ここでは、2週間ごとに現金振込の仕訳を説明していきます。
入金ベースの「現金主義」ですね。
正式な複式簿記では「現金主義」ではなく、売れた日に「売掛金」として計上し、入金したら「売掛金」を消し込むという「発生主義」が原則です。
ただし、規模の大きなアマゾン販売になると、2週間の決済期間に、数千、数万の商品が売れることがあり、個々の商品ごとに記帳していたら、帳簿はカオスと化します。
なので、期中は2週間ごとに現金主義で記帳したうえで、期をまたぐ12月~1月の売上を決算仕訳でなどで処理します。
いずれにせよ、1年を通じた売上も支払う税金も変わりません。
最初に支払明細書を入手する
まず、支払明細書を入手しましょう。
セラーセントラル(販売管理画面)を使いますが、入手方法が分からなければ、以下で解説していますので、まずはそこから始めてください。確定申告をするためには、1年分のこの支払明細書をプリントしておくことが必要だからです。
また、支払明細書は、税金(消費税)の取り扱いで複数(新旧2パターン?)あります。実質的には同じ明細書ですが、混乱しがちなので、以下のページで解説しました。これも参照ください。
ここでは、以下の支払明細書(上記の記事のパターン2)で進めていきます。
これを見ながら、仕訳をしていきます。ここでは、やよい青色申告オンラインの入力例ですが、どんな会計ソフトでも理屈は同じなので、それぞれ置き換えながらやってみてください。
明細書の各項目を解読してみよう
明細書の項目は次のとおりになります(一部解読中)。
蓋然性の高い推定ですのでご注意ください。
①純利益=口座への振込額
冒頭で記したとおり、2週間に1回、アマゾンから登録口座に入金があります。通帳やネットバンキングで確認できます。
純利益とありますが、これは、購入者が支払った代金からアマゾン手数料などを差し引いた額です。会計上のもうけではありません。
会計上の利益を出すためには、ここから商品の仕入代金やかかった経費(仕入送料など)を差し引く必要があります。
純利益は、単にアマゾンからの振込額と考えてください。
②商品代金=商品そのもの価格(税抜)
商品の税抜価格です。購入者が支払います。売上に含めます。
③税金=消費税
購入者が支払った商品代金の消費税から、事業者がアマゾンに支払った手数料などの消費税を差し引いた額と思われます。
ここでは、売上に含めます。
④配送料=購入者が払った配送料(プロモーション割引で相殺されることが多い)
これはくせものです。
見かけ上は購入者が配送料を支払ったように見えますが、プライム会員や、合わせ買いが一定額を超えると、多くの送料が無料になります(ただし、自分で発送している商品は送料有料が多い)
プライム対象商品かどうかは商品ページで確認できますね。
アマゾン直売のほぼすべてと、第三者が間借りして出品するマーケットプレイスのうち、FBI発送分がプライム商品に該当します。自家発送でも配送が早ければプライム商品になるなど、アマゾンの送料システムは複雑ですので、詳しいことは各自ご確認ください。
個々のトランザクションを見てみましょう。いわゆる売上明細です。
これを見ると、購入者は186円の配送料を支払い、プロモーション割引で186円を戻しています。アマゾンの広告戦略が功を奏したか、体感上、最近の購入者の属性はほとんどがプライム会員です(商材によって比率は異なるかもしれません)。
この結果……
ほとんどの購入者(ほぼすべて)は配送料を払っていません。
正確に言うと、業者やアマゾンは、配送料を上乗せして商品価格を設定しています。プライム会員にならないと、配送料を含んだ価格に、さらに配送料を払わされる。つまり二重払いするイメージです。
以上のことから、会計上は注意が必要です。つまり……
配送料を購入者が支払った「売上」として計上し、プロモーション割引を「売上のマイナス」として記帳し相殺する必要があります。
⑤その他
現在解読中です。支払明細書で「売上」に含めていますので、貸方に含めます。
⑥返金済みの支出=支払った手数料の戻し
アマゾンで売上があると手数料がかかりますが(⑨&⑩)、返品が発生すると、すでに支払った手数料が戻ってきます。
⑦にかかる手数料が戻ってきたと考えていいかと思います。
amazon手数料の減として、貸方(右側)に記帳します。
⑦返金済みの売上=購入者からの返品(売上のマイナス)
そのまんま返品額です。購入者が支払った代金を、購入者に返金します。
つまり、売上のマイナスです。仕訳上は借方(左側)に記帳します。
アマゾン販売をしていると、商品の到着が遅れたなどの理由で、返品が発生します。アマゾンは顧客重視を徹底しているので、商品に欠陥がなくても、返品は事実上やり放題で、以前から問題になっています。返品された新品が中古品になっていたり、壊されていたりすることもあります。
でも、嘆いていてもしょうがありません。FBIでは有無をいわせず、返品は粛々と機械処理されます。
⑧プロモーション割引=プライム会員などの送料無料に伴い、配送料などから差し引きます
④の配送料の項目を参照ください。購入者が支払った配送料は、プロモーションサービスを装う形で、ここで差し引かれます。
配送料の項目で記したとおり、売上のマイナスで仕訳では借方(左側)に記帳します。
⑨FBA手数料=ばか高い手数料
言うまでもありません、たっぷりとられます。会計上は経費で処理しています。借方(左側)です。
⑩Amazon手数料=ばか高い手数料
言うまでもありません、たっぷりとられます。同様に借方(左側)に記帳します。
⑪その他=購入者に還元するアマゾンポイントなどです
アマゾンポイントは商品別の個別に設定できます。アマゾンは楽天やヤフーショッピングなどに比べて、ポイント付与率が貧弱です。以前、アマゾン側がポイントの強制付与を業者側に課そうとしたことがありました。しかし、公取委が動いたため、見合わせました。
これも、売上のマイナスで仕訳では借方(左側)に記帳します。
仕訳で注意すべき点は、売上を「購入者が実際に支払ったお金」に極力近づけるということです。④の配送料を売上に含めたら、⑧のプロモーション割引は売上のマイナスとして相殺しましょう。配送料が全額売上に計上されただけだと税務上も不利になります
この点を理解したうで、明細書から仕訳をしていきます。
やよい青色申告オンラインで仕訳する
会計ソフトの操作は割愛しますが、若干難易度は上がります。
左側の仕訳の入力をクリックします。かんたん取引入力で記帳できません。
左側にある「追加」や「削除」で、伝票は上下に増えたり、減ったりします。
右上の売上は②+③(商品代金+税金)を入力します。
入力画面に電卓が組み込まれているので、それを活用ください。
仕訳パターンのひな形を登録しておこう
この仕訳例のひな形を登録しておくと便利です。やよい青色申告オンラインのマニュアルやQ&Aを参考にしてください。
このような仕訳を入金があるごと(2週間ごと)にしていく必要があります。
年末や年明けにまとめてやってもかまいません。慣れれば、そんなに時間はかかりません。
参考:別のざっくりした仕訳も?
ちなみに、過去の決済情報の数字を使って、仕訳もできそうですが、これって、ざっくりしすぎていませんか。チェックしてみましょう。
これを明細書と照合すると、
- プロモーション割引額合計は明細書の⑧
- Amazon手数料合計は明細書の⑥-⑩
のようです。もちろん、振込額も一致します。
しかし、商品代金合計も微妙に明細書と異なりますし、消費税やら、ばか高いFBA手数料やらは、どうも「その他合計」に含まれているようです。「その他」はごった煮のようです。
なので、今回は支払明細書から仕訳をしてみました。
明細に対応した売れた商品一覧や、月次の売上表も出力できますので、仕訳の仕方はいくつもあるようです。
よりかんたんな方法があったら教えてください。
今回は期中の振込明細から仕訳をしました。期をまたぐ会計処理については、以下の記事を参照してください
以上はmokuの入力例です。税務の専門家ではないので、間違っていることがあります。参考するにしても、あくまで、自己責任としてください。できれば、ページのハードコピーを税理士や会計士、税務署職員に示し、是正点があれば、コメント欄でフィードバックしていただければ幸いです。amazon.co.jpからの非公式のアドバイスも大歓迎です
初めまして、詳しく記載して頂き助かっております。
1点質問がありコメントを残させて頂きます。
年度またぎの場合の記載はどのようにされていますでしょうか?
発生主義が第一かと思われますので、
各注文のトランザクション詳細から12/31までの内容を確認し、
ポイント利用等は売上のマイナスで処理しているのでしょうか?
お教えいただければ幸いです。
はじめまして(^^)
Amazonせどりで仕分けの方法を悩んでいる初心者です。
お伺いしたいのですが、
こちらのブログで紹介されている期中は現金主義で仕分けをする。の記載なのですが、青色申告特別控除は60万円ではなく最大10万円までとなるのでしょうか?
60万円の青色申告控除をできれば行いたいと思っているのですが、この辺りが引っかかっており、なかなか帳簿付ができなく、困っております。
ご教授いただけないでしょうか(>_<)?
お問い合わせありがとうございます。
連絡が遅れてすいません。
ここで紹介しているのは、ご指摘のとおり、現金主義です。つまり、入金時に対応する明細表を仕訳しています。
ただ、現金主義は期中(会計期間中)のみです。期をまたぐ売上は、それぞれの会計年度ごとに振り分けなければなりません。
たとえば、1月7日のamazonからの振込額の仕訳では、振込額に含まれる12月末分の売上を12月31日の仕訳で「売掛金」として計上します。
そのうえで、1月7日に振り込まれたらその売掛金分を消し込む――という作業になります。
つまり、期中の売上→現金主義 期をまたぐ売上の振り分け
という二段構えです。
これで、65万円の青色申告特別控除のための帳簿付けはOKです。複式簿記は、発生主義が原則ですが、正しく期またぎの売上を算出し、正しい税金額を納めれば税務当局は何も言いません。
なお、青色申告特別控除を受けるには、青色申告承認申請書を前もって税務署に提出する必要があります。また、65万円控除を受けるためには、複式簿記での記帳とともに、電子申告が必要になります。対面や郵送での提出は55万円控除となります。
ただ、複式簿記に挫折して、白色や、青色10万円控除になってしまっても、その経験は生きてきます。3年前の自分もそうでした。
税務当局は、帳簿が少し間違っていても、税金を納めようという人には寛容です。当局が目を光らせているのは無申告、不申告者です。
コメントありがとうございます。
アマゾンの売上の期末処理につきましては、
年をまたぐ入金に対応した売上表をセラーセントラルでまず抽出して、
それを年ごとに二つに区分けし、Excelで集計しています。
そのうえで、やよい青色申告オンラインでの会計上は、
未払金(アマゾン手数料)、売掛金(売上)で仕訳しています。
といっても、この説明では分からないと思います。
実はこのような疑問があるだろうと思い、その手順をいったん書きかけました。
ただ、あまりに煩雑になり、「これ読まれないだろうな」と思い留保していました。
近々アップしますので、参照ください。
ただ、あくまでご参考ということで。
なお、ポイントは支出の「その他」に含まれているようなので、
記事にあるように、売上のマイナス処理をしています。
初めて青色申告にチャレンジしています。大変参考になりました。
質問させていただきたいのですが、例で載せていただいている資料には期首残高と引当金が発生していませんが、その2つが発生した場合の仕訳入力はどうされているのでしょうか?
コメントありがとうございます。
引当金は現状amazon販売で発生しておらず、貸倒引当金などを計上することもありませんので、処理はしていません。
なお、期首残高、期末残高は別途Excel集計して、その額そのものを会計ソフトに入力する必要があります。
通常は入力すると、12月末日に勝手に仕訳が現れます(決算処理)。
期首、期末残高の集計(棚卸)は年に1回するだけです。
なお、期首残高(前年の期末残高)のExcel集計の仕方は以下の記事を参照ください。
https://mokublog.org/amazon-tanaoroshi