Go To トラベルキャンペーンが7月22日から始まります。当初は8月~だったので、前倒しとなります。旅行代金の半分、1人1泊2万円を上限に補助してくれるキャンペーンで、1兆3500億円の税金が投入されます。
キャンペーンの中身はここでは、詳細を省きます。
いきなり、東京発着分がキャンペーン対象外に
一方で、主管の国土交通省(観光庁)が16日、東京発着分はキャンペーンの対象としない方針を明らかにしました。そもそものキャンペーンの目的は、コロナ拡大で窮地に立たされている観光業の復興です。そして、消費拡大によって景気の落ち込みに歯止めをかけることです。そのために、国民に旅行や観光を奨励しているのです。
どんどん、旅行に行って、お金使ってね、ということです。
キャンペーンで、東京発着を除外した背景は、東京を中心にコロナ感染者数が高止まっていることです。7月9日~12日の東京の感染者数は200人を超え、16日は286人に達しました。緊急事態宣言の解除後、最も多いレベルで推移しています。
こうした厳しい状況から、人の移動を伴うトラベルキャンペーンなんてとんでもない、という反対意見もSNSなどで散見されました。その主張はこの一点へと集約されます。主に感染者数が少なく、観光が主産業ではない地域の声です。
東京都民が押し寄せてきて、コロナまき散らかされたらたまらない。汚いから、とにかく来るな!
自治体の長からも全国一律の実施は時期尚早という考えが示されました。コロナを都会から地方に持ち込んだらそれは人災という声もありました。
こうした懸念に配慮したのが、東京発着分を除くということのようです。
東京都民の旅行はキャンペーンから除外
ただ、22日スタートはそのままでした。延期は回避されました。細かいキャンペーンの運用方針は現時点で明らかになっていませんが、少なくとも東京都民の旅行はキャンペーンの対象からはずれました。地方から東京への観光も対象外です。
この方針転換で、旅行を計画していた東京都民は混乱していることでしょう。また、上京しようとしていた地方の方も困惑しているでしょう。そもそも、地方から東京ディズニーランドに行くのはキャンペーンの対象なのでしょうか。その所在地は千葉県浦安市です。ほとんど東京です。川崎の住民が対象で、隣接する世田谷の住民は対象外というのも、おかしい話です。
東京、神奈川、埼玉、千葉の首都圏は、通勤、通学、買い物などで人が行き交う同じ生活圏です。
とりあえず、今後予想される問題点をあぶり出します。
東京都民の旅行は禁じられていない
そもそも国は7月22日~25日の4連休を当て込んで、キャンペーン期間を前倒ししています。東京都民がキャンペーンの対象にならなくても、「まあ、しょうがない」と、旅行代金割り引き(補助)はあきらめて、計画どおり旅行する方がいるでしょう。
お金に余裕があればそうするでしょう。国の補助がなくなるだけで、東京からの旅行が禁じられたり、自粛を求められているわけではないのです。緊急事態宣言は「再」発令されていません。
政府の分科会メンバーで、感染症学会幹部も16日の会議後、こう語っています。
「東京に行っちゃいけない、出てはいけないといったメッセージにならないようにしないといけない。3密を避けてマスクを適切にして旅行するならいい」(17日朝日新聞より)
ただ、旅行代金の半額補助とというキャンペーンを見込み、それを前提にして、夏の旅行を予約してしまった方はどうなるのでしょうか。キャンペーンを使って、東京から九州に帰省し、ついでに旅行もしようというファミリーもあるでしょう。
これって、かなりのダメージです。
東京外しではしごをはずされ、補助なしに
というのも、キャンペーン補助金は少なくありません。
東京に住む家族5人(夫婦2人、子ども3人)でちょっと贅沢に3泊60万円の旅行すれば、最大2万円×5人×3泊=30万円の補助金が出ます。60万円かかる旅行が、地域共通クーポンの額面を含めれば30万円で行けるのです(計算間違ってたらすいません)。
旅行代金に限れば、半額ではなく、35%引き。旅行代金15%分の地域共通クーポンがもらえるのは9月以降になりそう
ここに来て、見込んでいたこの30万円の補助分(旅行代金はうち21万円)が消えてしまうのです。はしごがはずされました。こうなると予算額によっては「まあ、しょうがない」と割り切り、実費(定価)で決行するにはちょっとハードルが高いでしょう。
そもそも、コロナで苦しくなった家計を勘案しながら、キャンペーンの補助金を見込んで旅の計画を立てている方が多いからです。こうした家族や個人がとると予想されるアクションとして、まず考えるのがキャンセルでしょう。
今回はあきらめて、次にしよう、という考えです。
国の方針転換でGo Toキャンペーンのキャンセル料金はだれが払うのか
ここで問題が出てきます。
旅行の出発日が近くなると、キャンセル料金がかかるのです。旅行代金の20%ぐらいから始まり、旅行日が近づくにつれて上がり、当日キャンセルは100%--。そんな感じだと思います。
60万円の旅行のキャンセル料は20%なら12万円、50%なら30万円です。旅行しなくても、キャンセルするとこれだけ取られるのです。罰金みたいなものです。
仕事や病気などでこうしたキャンセルはよくあることなので、どのトラベルサイトにもキャンセル料の体系は載っています。
さて、このキャンセル料金はだれが負担するのでしょうか。次の3通りになります。
- 国が方針を変えたのだから、国が負担する
- 旅行会社やホテル・旅館などがかぶる
- 旅行を申し込んだ個人(家族)が自己責任ですべて払う
どう考えても、国でしょう。国はキャンセル料は負担しないという情報も流れていますが、それは許されないことです。東京都民を含めた全国的なキャンペーンをやるやると言っていて、やらなかったのです。その責は国が負うべきです。個人にはまったく責任をありません。見通しが甘かったのでしょう。
キャンセル料について、菅官房長官は17日の記者会見で、「特段の対応は行わず、旅行会社にご判断いただく」と述べました。赤羽国土交通大臣も国は補償しない方針を示しました。「緊急事態宣言の時も同じ問題が起きた」として旅行会社などに責任転嫁するようです。
そもそも、旅行とは直接関係ない宣言の発令と、今回の旅行に的を絞ったキャンペーンとはまったく性格が違います。
「補助するから旅行に行ってください」が急きょ「東京都民の旅行補助はやめました」と豹変したのです。
キャンセル料むしり取るのか 旅行会社の出方を注視
旅行会社はサービス業です。泣く泣く旅行をあきらめた利用者からキャンセル料をむしりとることはできないでしょう。国の方針が変わったから、旅行会社なんとかしてよ、って国のやっていることはめちゃめちゃです。
また、旅行を計画していた東京都民にとっては、裏切られた思いでしょう。直近では7月の4連休を見込んで、「コロナ不況で生活が苦しいけれど、お得になるから」とあわてて、旅行を申し込んだ方もいるかもしれません。
楽しみにしていた子どももいるでしょう。
学校が臨時休校となり、子どももずっと巣ごもりを強いられ、精神的なストレスを感じています。せめて、夏休みぐらい楽しもうという思いで、家族旅行を計画したファミリーは多いのではないでしょうか。
そう考えると、悲しくせつなくなります。
旅行会社のキャンセル方針が注目されます。大手旅行会社HISのHPには、何らの対応をする旨の文言がアップされています。
こう記されています。
※本事業での特定地区の取扱いについて報道がありましたが、現時点での対応方法は未定です。詳細が決まり次第ご案内いたします。
※現時点でインターネット上でお取消し操作を行われますと、所定のお取消料が発生いたします。
詳細は改めてご案内いたしますので、お取消し操作は行わずに後日当ページにてご確認ください。
JTBも対応を考えているようです。
HIS、JTB、じゃらん(リクルート)、一休、楽天トラベルなど大手どころは、横並びで同じようなキャンセル対応をしてくると思われます。しれっと、対応しなかったら、目立つし、リスクが高まります。
最初のタイムリミットはキャンペーンが始まる7月22日です。ここで、何らかのアナウンスがあるでしょう。
国の方針転換で、旅行会社も困惑というより、激怒していることでしょう。
ただ、旅行会社は何もせず、キャンセルの尻拭いを個人でしろ、と言うのだったら、国による「やるやる詐欺」です。さすがにそれはないかと思います。旅行会社も手立てを講じると思われます。
日本人は穏やかな国民性ですが、欧米だったら暴動が起きそうな事案です。
一転、国がGo Toトラベルキャンペーンに伴うキャンセル料を補償
その後、国はキャンセル料を補償するという方針を明らかにしました。朝礼暮改です。
筋が通らないことをしていたので、補償は当然です。これを受け、各旅行会社はすでに予約をしていた利用者が不利益にならないよう対応するでしょう。ただ、旅行会社も混乱しています。こう国の方針がコロコロ変わったら、どうしたらいいのか分からないのでしょう。
また、キャンセル料が補償されることになりましたが、各旅行会社で手続きは異なるでしょう。分かり次第、更新していきます。
すでに予約してしまった。どうなるの?
また、東京都民のキャンペーン除外で、旅行代理店やホテル・旅館など全国の観光業界はすったもんだだと思います。国も補償しない方針から、補償することになりました。東京発着の観光客はもちろんパイが全国一多いので、キャンセルが続出し、その対応に追われているでしょう。
ホテルや旅館など宿泊施設は、需要に応じて、食材を仕入れ、ヘルパーを雇い、準備をします。その需要がいきなり国の方針転換で、キャンセルされたらどうなるでしょう。大きな市場である東京都民を除外することは大きな負のインパクトがあります。とんでもないことになるでしょう。
ただ、7月中旬現在、キャンペーン利用者は7月22日以降に旅をする先行予約だけで、キャンペーンによる旅行の値引き販売は27日~でした。
予約分はGo Toの対象にしたら、混乱は収まりそうだが
始まったばかりなので、混乱を防ぐため、すでに予約した分はキャンペーンの対象にしてしまう。それが現実的だと思います。国の見通しの甘さと朝令暮改によって、生み出された混乱だからです。そこから、仕切り直せばいいかと思います。キャンペーン対象は22日~の旅行なので、すでに予約した分は事業全体からみたら、それほど大きくないと思われます。
そのうえで、新規予約分から「東京都民ダメ」「東京への旅行ダメ」とし、選別すればいいのではないでしょうか。
キャンペーン対象になるはずだった旅行代金が、いきなり「対象ではありません」という方向になり、利用者のはらわたは煮えくりかえっています。このご時世、キャンペーン割引を見込んで旅行計画を立てた人が多いと思われます。
国は国民(東京都民)にキャンペーン対象になると約束していたので、キャンセル料とられたとなれば、へたすれば、訴訟でしょう。
罪状はやるやる詐欺です。
さすがにこれはまずいと思って、国が一転、キャンセル料を補償することにしたのです。与野党からの突き上げもありました。
これに加えて、先行予約分はキャンペーン対象にするなど柔軟な運用は考えられないでしょうか。旅行会社や宿泊施設は東京発着分のキャンセルの嵐で、悲鳴を上げているのです。
コロナと共存しながら、経済活動を回復
ちなみに、mokuはGo To トラベルキャンペーンのスタートを歓迎しています。
ウィズコロナ時代というように、コロナは結構長いスパンで終息しません。それが多くの専門家の見通しです。もちろん、理想は経済活動をすべて止めて、コロナ制圧に専念することです。それって、国が全世帯に20万円ぐらい毎月給付すればできるでしょう。
でも、国にそんな予算はありません。現実的には不可能で、予算あったら、消費税上げません。
国民は働いてお金をもらって生活を維持し、企業も利益を上げなければならないのです。
それが、経済です。
現状の日本は米国やブラジルほどコロナは深刻ではありません。オーバーシュートの時期を除き、コロナと共存しながら、経済活動を回復させなければなりません。消費を回復し、お金を循環させなければ、これまで見たことのない大不況の風景を見ることになるでしょう。
その一つの打開策が、観光の復興なのです。
経済死んだら、人が死ぬ
コロナ対策のone of themに過ぎないことは分かっています。予算規模の大きさからいって、持続化給付金や家賃給付金と同じです。すでに、日本は失業や派遣切りが横行し、ジリ貧化しつつあります。この苦境をしのぐには、網羅的にone of themを積み上げていく必要があります。
観光に金を使うのだったら医療機関や医療関係者への手当を、という声もあるようです。それもone of themで大事なことです。ただ、こうした一連のone of themはすべてが一律にいまやらなければならないことです。
というのも、経済死んだら、人が死にます。生活ができず、人心も荒廃します。
現状において、コロナ制圧と経済復興に優先順位はありません。ちなみに、アベノマスクなどは大失敗でした。個々のone of themは近い将来、しっかりと費用対効果を検証しなければなりません。
※以上の論考につきまして、国や旅行代理店などの方針が決まりましたら、随時更新します。