金融庁の「老後に2000万円足りない」問題がクローズアップされました。みなさんはどう思ったのだろう。だいたい、2つに分かれると思います。
「年金の胴元である国が国民を見放した。無責任だ。ふざけんな!」
という声がまず一つです。定年後、厚生年金、国民年金をもらっても毎月5万円足ない。まして、平均寿命も伸び、なかなか国民は死んでくれない。だから、自助努力をしろ、自分で稼げ、ということなのだろう。
100年安心プラン、どこ行ったんだ。「そりゃ、ないだろう」と国民は怒り、参院選前に自民党はその火消しに躍起になりました。
一方で、もう一つの国民の声があります。むしろ、こちらも多いと思います。。
「2000万円? そんなんで老後足りるはずないだろ。何をいまさら」
同意見です。住宅ローン返済も70歳まであり、月30~35万円の手取りでは生活できません。このまま何もしなければ、家計は破綻し、13年住んだ自宅を売るしかしません。
手をこまねいているわけにはいきません。国もあてになりません。そこで、資本主義社会の自助努力、つまり貯金や投資です。家計の足しにするための副業はすでに始めました。
株式投資は5年ほど前からしています。死んだおふくろの遺産を処理するため、株式を売却したのが始まりでした。自分でも口座を開設して、株の売り買いしましたが、鳴かず飛ばずです。
種銭(元本)から2~3割へこんでいるでしょうか。含み損のままで、売っていないので損失が確定しているわけでもありません。いつか買値に戻るだろうと悠長に構えていますが、老後に向けた投資となると、そういうわけにはいきません。
リスクを回避し、数%でも利幅をとる。せめてトントンで、損はなるべくしたくない。

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そこで、投資信託です。
中でも、日本・世界の株式・債券市場と連動するインデックス投資(この意味は後ほど説明)です。しかも、5~10年以上の長期投資です。まあ、それまでは生きているでしょう。
投資信託を始めるため、情報収集を始めました。株式投資とは違って、リスクをおさえようとすれば、それなりにできるようです。
ただ、株と同じで、元本割れのリスクはあります。でも、インデックス投資になると、個別株ほどリスクは高くありません。リーマンショック級だと平均株価は4~5割暴落するのですが、債権などと絡めていけば、リスクヘッジがききます。相殺されます。国内債権はリーマンショックでもびくともしませんでした。退場は避けられそうです。
高齢者、シニア世代が心がけなければならない投信信託の掟(おきて)は何でしょうか。投資信託を始める前におさらいします。
投資信託はインデックスファンドだけを買う

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投資信託は運用を任せること
数カ月、いや数週間までは「投資信託って何のこっちゃ」でした。でも、調べたら、どうってことありませんでした。文字通り、投資を信託することです。つまり、「この金融商品を買うから、運用してもうけさせてくださいね」と、ファンドマネージャーというエキスパートに頼むのです。投資商品のことを単にファンドということが多いようで、以下ファンドと呼びます。
ファンドには大きくわけて2種類あります。インデックスファンドとアクティブファンドです。
インデックスファンド
インデックスというのは指標のことです。
つまり、日本や世界の株式、日本や世界の国債、内外のREIT(証券化された不動産)などと連動して、上下する指標連動型のファンドです。以下の表がインデックスファンドの種類です。国内債券といったら、日本国債です。世界でもっとも値動きが少なく、他の指標に影響されない資産クラスです。
何に投資するかということで、資産クラスとか、アセットクラスとか言うようです。下の表の、海外債権(先進国)、国内リートのことです。
インデックスファンドの資産クラス
種類 | 日本 | 海外 | その他 |
---|---|---|---|
債権 | 国内債券 | 先進国債権 新興国債権 |
国内REIT |
株式 | 国内株式 | 先進国株式 新興国株式 |
海外REIT |
国内株式インデックスファンドと言ったら、日経平均株価とほぼ同じ動きをするファンドです。TOPIX連動のファンドもあります。海外株式(先進国)インデックスファンドといったら、主に米国を中心にした株価と連動します。
いずれのインデックスファンドも、株式ファンドだったら、複数企業の株価、世界の株価の組み合わせでできています。なので、日経平均やS&P500などマーケットの平均株価(指標)が上がれば、ファンドも連動して上がります。
下がる時も同じです。ほぼぶれません。ぶれないように、ファンドマネージャーが運用しているのです。
アクティブファンド
一方、アクティブファンドは、「日経やダウの値動きは生ぬるい。ガンガン値上がりをしてバンバンもうけよう」という投資家向けのものです。たしかに、日経平均だと、個々の株価が10%値上がりするものがあったとしても、逆に大きく値下がりする銘柄があり、平均は相殺されて、そんなに大きく動きません。
日経平均が1日で5%上下することなんて滅多にないのです。もし、日に日に3~5%ずつ下がり続けるということがあったら、それはリーマンショックのような経済危機か、恐慌です。
ところが、アクティブファンドは、「この企業は成長するだろうな」「経営方針がいいな」と近い将来の大きな成長が見込める企業の株などを組み合わせ、文字通りアクティブに動きます。ファンドの中に、中小のベンチャーが含まれているのもあります。その結果、リスクを取る代わりに、動きの鈍いインデックスファンド以上のもうけを狙っているのです。
つまり、インデックスファンドより高い利回り(パフォーマンス)をめざしているのがアクティブファンドなのです。
たとえば、2年ほど前にテレビで取り上げられ、脚光を浴びた「ひふみプラス」がアクティブファンドです。mokuもテレビをリアルタイムで見たことを覚えています。ファンドを組むにあたって、全国の中小企業を巡り、社長さんから事業計画を聞き取り、成長性を判断するといった内容だったと思います。
でも、ネット証券のリストを見ると、怪しげな地雷級アクティブファンドもありますね。なので、アクティブファンドはすべて見ないことにしましょう。しろうとにとって、アクティブファンドで長期にもうけようなんてできないのです。
シニアがアクティブファンドに手を出してはいけない理由
投資の常識があります。
ハイリスク・ハイリターンです。これには例外はありません。もうけが大きく出やすいファンドはその分、大きくへこむ可能性が高いということです。うまいもうけ話はありません。
アクティブファンドはハイリスク、ハイリターンが多いのです。
一方で、複数のインデックスファンドを組み合わせるとローリスクになり、ローリターンになります。高々年利4~5%です。個々のインデックスファンドには、ビュンビュン上下するものがありますが、債権などのろのろ動く資産クラスと組み合わせることで、相殺されて、全体が落ち着くのです。
銀行の窓口ですすめられた投資で、退職金のほとんどを溶かした。そんな、嘆きのほとんどは株式投資かアクティブファンドでしょう。さすがに退職金でFXに初めてチャレンジするシニアはいないでしょう。自殺行為です。
もし、20代ならアクティブファンドで攻めてもいいかもしれません。大きく損をしても、やり直しがきくからです。投資の勉強にもなり、将来にも生かせます。でも、50代以上の定年間際のシニア世代はそこまでリスクがとれません。
また、短期では魅力的に思えるアクティブファンドは、10年~20年以上の長期保有となれば、選択してはいけません。その運用結果が、インデックスファンドやその組み合わせに負けてしまうのです。このへんは、過去のデータ分析から明らかなことです。
また、アクティブファンドはインデックスファンドに比べて、総じて手数料(信託報酬料)が高いため、たとえもうかったとしても、手取りが目減りします。なので、シニア世代がアクティブファンドを選ぶメリットはありません。
投資信託の原理原則
以下はプロ投資家のほぼ100%が明言する「格言」です。経済学者や投資のエキスパートが、過去の運用データをガチガチに分析したうえでの共通の結論ですので、覆しようがありません。
個人投資家にとっては、個々の株式を売買したり、プロのファンドマネジャーが運用する投資信託に投資するよりも、ただインデックス・ファンドを買ってじっと持っているほうが、はるかによい結果を生む。
引用:ウォール街のランダム・ウォーカー(日本経済新聞社 井出正介訳)
ウォール街のランダム・ウォーカー<原著第12版> 株式投資の不滅の真理
投資信託はネット証券で買い、銀行で買わない

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投資信託は、証券会社、銀行、ゆうちょなどの金融機関で変えます。気をつけてほしいのは銀行の窓口などですすめられた投資信託は買ってはいけないということです。
退職金が給与口座に振り込まれると、「お金を寝かせていても増えないので、投資信託はいかが」と銀行からすすめられることも多いそうです。でも、応じてはいけません。その理由はこれにつきます。
- 手数料(信託報酬料)が高い
- とんだ食わせものの投信をつかませる
手数料の高いファンドは買わない
銀行などの金融機関は金融商品を売って、その手数料をかせいでいます。ゼロ金利政策が続いているので、融資して利息をかせぐことができません。このため、顧客のもうけはさておき、手数料が高いファンドを推奨します。悪いことだと言っているのではありません。金融機関の営業ですので、ある意味当然ですが、投資家がそれに乗る必要はありません。
無知ほどこわいものはありません。銀行の窓口で相談する分にはかまいませんが、しっかりと理論武装をしましょう。もし、対面で相談するなら、その意見を参考にしながら、いろいろ吟味して、手数料が一番安いネット証券で手数料が一番安いインデックスファンドを買う。それがいいでしょう。
信託報酬の高いファンドは買わない
また、異なるファンドではなく、同種のファンドでもネット証券以外だと信託報酬(預かって運用してもらう手数料)が高くつきます。下記はゆうちょ銀の投信の売上ランキングです。ネット証券にも同様のランキングがあるので、手数料を比べると、どういうことが起きているのかが分かります。
日経平均など同じ資産クラスのファンドがあったら、信託報酬などの手数料が安いものを選んで買うのが王道です。大元のファンド(マザーファンド)が同じなので、ベビーファンドの運用実績やもうけ、損失はどこも同じだからです。だから、銀行や証券会社の窓口で買うメリットはありません。
投資信託はSBI証券や楽天証券などのネット証券で必ず買う。
それが、鉄則です。銀行ですすめられても買ってはいけません。
ネット証券の口座開設の申し込みは急増
実際のところ、「老後に2000万円足りない問題」で、手数料の安いネット証券の口座は激増しています。7月30日の読売新聞によりますと、楽天証券のNISA口座とイデコ(個人型確定拠出年金)の口座申込数が6月は前月の2倍になったそうです。
SBI証券やマネックス証券でも3~5割増と、堅調に推移しています。
世代別では、投資経験のあまりなさそうな30~40歳代の申し込みが多く、金融庁の有識者会議が長期にわたる資産形成を紹介していることが影響しています。
でも、「NISA口座でどの投資信託にすればいいの」と初心者は迷います。たとえ、若くてもさすがに株式やFX、アクティブファンドからいきなり始める人はいないでしょう。リスクが高すぎます。
したがって、初心者が選ぶターゲットとしては、インデックスファンドの積立投資になります。
投信ブロガー推薦のファンドから選ぶ
では、インデックスファンドを買うのに何を参考にしたらいいでしょうか。SBI証券や楽天証券などの人気ランキングを参照にするのもいいでしょう。こうしたネット証券はインデックスファンドの取り扱い本数が多く、手数料の低さや運用実績でしのぎを削っています。上位はかなりおすすめだろうと思います。
さらに、参考にしてほしいのが、以下のサイトです。
投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2019
証券会社の宣伝やうたい文句にまどわされず、自分たちにとって本当によいと思える投資信託を投信ブロガーたちが投票で選び、それを広めることで「自分たちの手でよりよい投資環境を作っていこう!」というイベントです。
上記の引用のように、ブログを運営しているベテラン投資家が選んだおすすめファンドです。ニュートラルなので、信頼できます。同じ資産クラスのファンドでも、吟味して「これっ!」と選んでいます。
また、ここで選ばれることが、胴元(投資信託の販売会社)のステータスにもなっているようで、この「Fund of the Year」から選べばはずれはないと思われます。
また、下記は手数料の安い人気ファンドのリストです。
金融機関や証券会社から独立したニュートラルな出版社(ダイヤモンド社)のサイトです。ファンドの信託報酬などの手数料は激烈な値下げ合戦が繰り広げられています。投資家にとってはよろこばしいことです。この中から手数料の一番安いインデックスファンドを選んで、ネット証券で買えばいいのです。
迷うことは何もありません。
何より、シニア世代や高齢者が投資信託を買う場合に注意しなければならないことがあります。
毎月分配型ファンドは買わない
銀行の窓口などでは、毎月分配型のアクティブファンドをすすめられるかもしれません。これも買ってはいけません。毎月分配型のファンドを買うと、毎月いくらかのお金が口座にふりこまれます。投資信託というと毎月分配型をイメージする方が多いかもしれませんが、お得度はまったくありません。
毎月分配型なので、ファンドの決算が毎月(通常は1年に1回)です。そこで出たもうけを投資家に配るのです。これを普通分配金と言います。シニア世代にとっては毎月毎月こずかいが振り込まれるような感覚で、魅力的に思えるかもしれませんが、
でも、これがくせものです。
元本を削り、投資家に戻す
考えてみてください。元本保証のされていない高リスクのファンドが毎月必ずもうかりますか。まして、アクティブファンドが多く、どんな敏腕のファンドマネージャーでも、増やし続けることはできません。大きく増やすことがあれば、大きくへこむこともあるでしょう。へこんだら、どうするのでしょうか。
元本を削って、投資家に分配するのです。
これは、普通分配金ではなくて、特別分配金と言うようです。ただ、元本は自分の投資金なので、その一部を戻されても税金はかかりません。でも、タコが自分の足を食っているようなものです。
うれしくもありません。
もうけも削られ、複利効果がない
アンパンマンが顔のパンを「特別」にちぎり、苦戦している姿が浮かびます。積み立てた投資信託の金の一部を投資家に戻し、「これ分配金です」と言うのです。ずっと運用がうまくいかなかったら、元本がどんどん減っていきます。
では、分配金のないファンドのもうけはどうなっているのでしょう。元本に組み入れて上乗せし、複利で運用しているのです。ファンドが雪だるま式に増えていくのです。一方、分配型のファンドはもうけが出ても、分配してしまうので、そうした複利効果もあまり期待できません。
ゆうちょ銀行の売上上位は毎月分配型だらけ
たとえば、日本郵政の子会社、ゆうちょ銀行の売上上位ファンドです。

ゆうちょ銀行HPから
毎月分配型が多いですね。どういうことか分かりますか。これらは、客が自発的に買っているのではなく、郵便局の窓口ですすめられているのです。客はだいたい、高齢者、シニア世代と推測されます。
定年間もなければ、退職金が狙われるのでしょう。さらに、高齢になると、お金を使わないので、余裕資金がある年金生活者もいるでしょう。
「退職金を運用していませんか。増えますよ。毎月おこずかいが入りますよ」と昔からつきあいのある郵便局員に言われたら、信じてしまいます。
「毎月分配型=悪」と言っているのではありません。元金をなるべく減らしたくないシニア世代にとって、毎月分配型は損をする可能性がきわめて高いのです。ほぼすべての投資家が口をそろえます。では、なぜ、そんなリスクがあるものを郵便局はすすめるのでしょうか。理由はこの一点につきます。
手数料が高く、郵便局がもうかるからです。
郵便局が取り扱うかんぽ生命保険の不正販売が吹き出してました。二重契約をさせたり、不利な契約変更をさせたり……。5年間で18万3000件だそうです。年寄り相手にやりたい放題です。
ノルマとは言え、よくぞ、ここまで年寄りからむしりとってくれます。
「ゆるキャラ」「半ボケ」ーー。保険がとれやすい高齢者の呼び名だそうです。一連の保険契約について、不正だとか、不適切だとか言われています。そんな甘いものではありません。ここまでやっちゃうと、郵政グループぐるみの組織犯罪と言いましょうか、刑事事件ではないでしょうか。
シニア世代として、はらわたが煮えくりかえります。許せません。金融庁だけではなく、捜査当局もブチ切れていると思います。
保険商品と、投資信託などの金融商品とは性格は違いますが、いずれも人生を豊かに生きるための運用商品です。それを郵便局で扱っています。
ほとんどのシニア世代や高齢者は金融商品の知識はありません。そして大損して、苦情を言っても「自己責任だ」「契約したでしょ」と突っぱねられるのです。
まとめ
- 投資信託はインデックスファンドだけを買う
- 投資信託はネット証券で買い、銀行で買わない
- 毎月分配型ファンドは買わない
個々には、アクティブファンドや毎月分配型ファンドを運用して大きくもうけたとか、銀行ですすめられたファンドを買ったら、もうかったとか、反論もあるかもしれません。
近年の景況は米国を中心に堅調に推移していたので、毎月分配型ファンドのメリットを十分に享受された投資家もいるかもしれません。
ただ、以上の点は、ベテラン投資家が口をそろえて指摘する最大公約数です。mokuの備忘録であるとともに、これから投資を始めようという初心者の参考になれば、ということでまとめました。
インデックス投資には難しさがあります。
それは、インデックスファンド以外がいかにもうかるかという、巷の誘惑にどのようにして惑わされないか。それにつきます。
この点を踏まえて、8月から投資信託を始めようと思います。